ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

「自分とは違う」を許容できるか『他人の意見を聞かない人』を読む。

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久しぶりに面倒くさい男に会った。やたらと自分のやっていることを勧めてくる男だ。自己啓発に余念がなく、常にハードワーク。遊びも仕事も真剣に打ち込んでいる。

 

それはそれで素晴らしい。私のような怠け者からすれば、公私ともに経済的にも精神的にもより高いところへという野心がうらやましい。彼を応援したい気持ちもある。しかし、その熱をこっちにまで向けられると、暑苦しい以外の何物でもない。

 

最近始めたドラムの練習の話から、一緒に通わないかと誘ってきた。一度断ると、断られることに慣れていないのか、さらにグイグイくる。こっちの事情など聞こうとしない。次から次へと自分の主張を話し始めるのである。

 

かつて、自己啓発セミナーにはまって、「さらに上のクラスに入るには知り合いを数人紹介しなければならない」というルールのもと、しつこく勧誘してきた男と同じ匂いがした。

 

想定していた答えが返ってこないと焦る。そして、その答えを訝しがるのである。私は営業マンだったから、Noと言われることに慣れているほうだ。YesかNoかを聞いているのだから、Noの答えがあって当たり前である。

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国の未来は若い世代が創る『ミッション建国』を読む。

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経営していると目標未達というのは、非常に大きな意味がある。プロジェクトを成功させなければ、会社が潰れる可能性もあるからだ。

私生活だって同じだ。目標未達は痛い。30万円かけて通った英会話で、ほとんど話せなかったら、話す機会を増やせなかったら、投資失敗だ。奥さんが財布を握ってさえいようもんなら、もう二度と英会話になんて通わせてもらえない。むしろ自分の使える予算は激減するだろう。

このように、「目標を達成できない」ということは重大なことなのだ。

 

「何を言う。君が思っているより大変なんだ。」そう言い訳すれば、返す刀で「大変なのになんでそんな目標を立てたの?そもそも考えが甘いんじゃない?」と切られるのがおちだ。すぐ反省し、行動や考えを改善しなければならない。

 

しかし、この世の中には何度失敗しても、「また次回がんばります」が通じる組織があるようだ。日本政府は17年度末までに待機児童「ゼロ」を目標としていたが、実現するのが難しく3年先送りするそうだ。

国民が税金を払っている限り、ばんばん国債を発行する限り予算は減らないと思っているから、彼らは懲りないのだろうか?できもしないのに「ゼロ」だって見栄切って、難しいから先送りしますって。「失敗、失敗」「次、次」の結果が1000兆を超える借金だ。

いかに政府という組織が、世間から浮いた存在かがわかる。

 

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暴力は人間の本性である『戦争にチャンスを与えよ』を読む。

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奇妙な夢を見た。16歳になった娘がロックバンドのコンサートに行くという。私は「テロが起きるといけないから、やめた方がよい」と諭す。しかし、娘は聞かない。私の忠告を無視してコンサートに向かう。私は彼女を追いかけてコンサートに潜入を試みる。数千にものぼるオーディエンスから娘を探すのは至難である。かき分けても、かき分けても人・人・人だ。しかも見慣れないターバンとあごひげの男たち、スカーフで顔を隠す女性ばかりだ。「パパも来てたの?」という声に振り返ってみると、娘がなぜかイスラーム女性の恰好で立っていた。そこで、目を覚ました。

 

こんな夢を見たのは、今回のマンチェスターでの自爆テロ事件のせいだろう。幼い少女が亡くなった。無意識に、何か他人事では済まされない感情が湧いていたのだろう。

 

人が殺されるニュースを聞くたびに、被害者を哀れみ、自分の身に降りかからなかった幸運に感謝する。戦争や暴力とは程遠いところにいるように感じる。そして、戦争や暴力が絶対的な悪と決めてかかっている。人間の本性が暴力的であるという事実を忘れている。自爆テロなど事件によって、私は改めて人間の本性に気づかされる。

 

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人間は矛盾した生き物である『自由と秩序』を読む。

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最近、いわゆる意識高い系の友人から、News Picksというキュレーションメディアを紹介された。新聞から雑誌まで、ユーザーが気になる記事が羅列されている。そして、Picker(ピッカー)という人たちが、その記事に対してコメントを書いている。

Facebookよろしく「いいね」ボタンまでついている。ピッカーは基本的に実名である。匿名性がない分、書いたことには責任を持たなければならない。「なるほど」と思いながら、友人が書いたコメントの誤字脱字を探している。相変わらず性根が曲がっている。

 

国会議員のお偉いさんや、会社の社長、ホリエモンなど著名人もPro-Pickerとして登場する。言わずもがな、彼らのコメントには異常なほどに「いいね」がついているし、記事に対する議論も活発である。キュレーションメディアだから、おいしい記事をかいつまんで読めるという効率性はうれしい限りだ。

しかし、よくもまあ、色んな記事に目を通して、長文でコメントをずらずらと書いておられるなあと、そっちのほうに関心がいってしまう。彼らは暇なのか。

 

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インテリは権力に弱い 『服従』を読む。

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5月に入ってフランス、韓国で大統領選挙が行われた。特にフランスでは、国民戦線のルペン候補に注目が集まったが、結局は大方の予想通りマクロン候補が勝った。フランス史上最年少の38歳だそうだ。自分とほとんど変わらない。奥さんが64歳という事実に、我々夫婦は愕然。そして、義理の息子がマクロンよりも年上。「さすが、自由・平等・博愛の国」と先進国のすばらしさを手放しで称賛した。

どの国も分断の危機である。貧富の差が開いているのも原因だ。アメリカでは白人労働者階級がトランプ大統領を支持し、インテリ層のヒラリー候補を破った。イギリスでもEU離脱を巡って、経済界と労働者階級で票が割れた。

フランスでは移民問題を巡って、移民排斥とEU離脱を目指すルペン氏と、親EU派のマクロン候補で最終決戦が行われた。

 

このブログでも何度か書いたが、最近の選挙ではポピュリズムという言葉が必ず登場する。メディアでも度々ポピュリズムは取り上げられ、本屋に行けば反知性主義に陥らないための教養コーナーなるものまで設置されている。

反知性主義ポピュリズムが、大衆迎合な政治手法であるならば、一般大衆とインテリ層の対立という構図なのだろうか。だいたい、我々大衆側が、俺たちは反知性主義だ、と自認して候補者を応援するわけではない。ポピュリズムとか無教養とかと言葉をつけたがるのは、たいがいインテリ軍団だ。メディア、大学教授、あとはどの雑誌にもご意見番で登場するような、「自分知識持ってますよ」集団であろう。

 

かくいう私も、大衆に埋もれたくない、世の中に踊らされたくないと思っている一人だ。しかし、知識の量・社会的な地位で区分されれば、断然大衆の一人である。

その他大多数が悪いわけではない。統計学では大数の法則なるものがある。大多数の意見は、一般的には正しいとされるのだ。

一方で、心のどこかでインテリに憧れている。知識も知恵もあって、社会的に認められる人間ならば判断は間違わない。より冷静に状況を見極め、適切に課題を解決する優れた能力を持っているのだろうと。

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ストレスは親の勲章か『子育てに効くマインドフルネス』を読む。

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子どもが保育園に入って1ヵ月が経つ。1歳半からのスタートだったため、なかなか決まらなかった。いわゆる待機児童で、3月までは託児所で数時間預かってもらっていた。

 

申請書を持って役所に行くと「候補を5つ記入してください」と言われた。「5つもないですよ。」と応えると「そうすると難しいです。とにかく近場の保育園は希望として全部記入してください」と脅してくる。

 

返す刀で「いやいや。こっちも大事な子どもを預かるんだから、近いという理由だけで候補を絞っているわけではないので、書きません」ときっぱり断ってやった。全くこれだから父親はという顔をしたあと、「本日は奥さまは一緒じゃないのですか」と聞いてくる。

 

「妻は仕事復帰して忙しいのです。会社経営している私のほうが自由に動けるので来ました」と応えた。「保育園選びは父親ではダメだ」と思われているようで悔しかった。

 

結局、絞りに絞った3候補を提出し、最終選考の結果、見事、第二候補の保育園に入れたのである。ようやく、子どもを預けて夫婦揃ってがっつり働く機会を得たのだ。

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地球の歴史から温暖化を考える『人類と気候の10万年史』を読む。

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気づけばもうゴールデンウィークだ。今年も特に予定を立てなかった。地域によって連休をずらして混雑を解消するなんていう話は、もはや聞かなくなった。頓挫したのだろうか。渋滞も嫌い、行列も嫌い。『どこが人口減少社会だ、もっと人なんか減ればいい』と思わず毒づいてしまうので、人が集まるところは避けて近場で娘と遊ぶことにした。草むらで寝っ転がりながら小説でも読むとしよう。

 

休みと言えば、今年も花見ができなかった。ちょうど見頃の時期にとんでもない風雨によって散ってしまった。その前の週末は、娘が熱を出して終日家から7分くらいの桜を眺めたのが最後だ。春らしい心地がしないまま、外を歩けばみんな夏服である。四季の移ろいはどこに行ったのだろうか。

 

温暖化によって気温はますます上昇している。温室効果ガスを抑えないと、21世紀末には約2.6~4.8℃上昇するそうだ。(気象庁ホームページ)毎回ニュースで流れる、帰省ラッシュでの渋滞の映像を見ると、なるほどCO2がどんどん増えていくわけだと思うのである。地球温暖化は人間の活動によるもの、というのが定説であるようだ。であれば人口減の日本は、温室効果ガス削減に貢献していると言えるのか。またくだらない話題からあれこれ考え始めて、気候についての本を読んでみることにした。

 

温暖化を考える時、20世紀と21世紀を比べることが多い。もしくは長くても人類誕生後の地球を想定している。しかしながら、地球の歴史は遙か大昔までさかのぼれるのだ。それこそ億年単位だ。人類が警告している気温上昇は、地球の歴史規模で見たとき果たして異常なのか。本書は、温暖化問題を考える上で、人類の歴史ではなく、地球の歴史という別の視点を与えてくれる。

 

ノート1:地球の歴史からみた現代

地球を5億年前までさかのぼり、気温を調べた結果、現代は寒冷であるとい結論に達する。例えば2億1000万年前は、今より10℃気温が高い。5億年の間、激しい気候変動を何度も繰り返してきた。温暖な時代もあったが、ある限度以上の温暖化は起こっていない。

 

さらに短く、過去80万年を振り返ると、9割は氷期である。現代と同等に温かい時代は1割である。現代は氷期氷期の間である比較的温かい間氷期と呼ばれる。

 

これまでの研究から地球は10万年単位で氷期と温暖期を繰り返すことがわかっている。過去の間氷期は2万3000年くらいである。過去、氷期の終わりには急激な温暖化を記録する。地球の温暖化は人間活動の要因以外にも、地球内のパワーによるところが大きい。現代は間氷期の終わり頃であり、温暖化よりも新たな氷期に突入すると予測される。

 

ノート2:気候変動にパターンはあるのか

ミランコビッチ理論は気候変動の原因を説明する、最も説得力のある理論である。ミランコビッチ理論によれば、地球の公転・自転が気候変動に大きく関係している。

 

地球の公転軌道の変化とは次の通りだ。太陽の周りを回る地球の軌道は、楕円から真円に変化する。楕円の時は、夏に太陽に近づきエネルギーを吸収するため、温暖になる。真円に近づけば近づくほど寒冷化する。それが10万年単位で起きている。公転に加えて、地球の自転、つまり地軸の傾きと、向きも定期的に変化する。太陽に近づく部分が変わるので当然、気候に影響する。

 

大枠として、10万年単位で氷期に入ることはミランコビッチ理論で予測できるが、具体的にいつから氷期に入るか、寒暖の差が激しい不安定な気候がどのくらい続くのかはわからない。

 

ノート3:より正確に気候の歴史を知る調査

地質学のより正確な時間を知るために、著者のプロジェクトチームは福井県水月湖から見つかった縞模様の堆積物の調査を行っている。水月湖は世界にもまれに見るほど、ピュアな堆積物が入手できる。理由としては湖底に酸素がなく、堆積物を浸食する生物が少ないことが挙げられる。

 

その地層に含まれる花粉の化石を通して、その時代の植物を知ることができる。植物によってその時代の気候がわかる。ある地層からは針葉樹が、別の層からは広葉樹がでれば、時代と共に気候が変わったことが把握できるというわけである。福井県あたりでも、時代によって生えている植物が違うことが明らかになった。

 

ノート4:気候変動と人類の活動の関係

10万年ごとに氷期が来る。現代は間氷期の終わりである。しかし、気温は上昇し続けている。これはどういうことか。人類の活動が氷期を遅らせているという説がある。根拠になっているのは、人類登場以降、メタンとCO2が増えているという事実である。

 

ミランコビッチ理論では、氷期に入るにしたがってメタンとCO2も減少するはずだった。メタンは水田農業、CO2は森林伐採と関係があるようだ。人間が爆発的な人口増加によって安定的な食料を確保し、住む場所を確保するために取った行動が、とっくに来ていたはずの氷期を遅らせているという考えもある。

 

一方で、地球自体が氷期の終わりに起こす温暖化の一つとも考えられる。人間の活動がどの程度、大自然の現象を壊すことができるかはわからない。

 

寒冷化を考えると、異常気象が毎年起こる場合には、先進国といえども大きな被害を受けるのは間違いない。農耕は食料不足に弱い。一方で、狩猟は気候の変動によって、狩るべき獲物を変えることができるため、適応できる。

 

氷期を経験した人類の祖先は、そのことを熟知して農耕をあえて起こさなかったとの見方もできる。人類の発展と農耕という通説とは相容れない意見ではあるが、氷期に備えて、昔の人類の生活、原住民の知恵から学ぶこともできるかもしれない。

 

もうすでに来ているはずの氷期を、人類の進歩が遅らせていた。これが事実であるならば、温暖化はむしろ正義である。それをやめたら、寒い氷期に突入するかもしれないのだ。とはいえ、人間が自然を破壊し、生態系を崩してきたのも事実である。地球が予測通りに動かなくなる原因を作ったのも頷ける。

 

個人的には温かい方がいいので、できるならこのまま快適な気候で生きていきたいものである。

 

著者によれば、1993年の冷夏のような現象が2年、3年と続いたらいくら先進国といえども多くの被害を受けることになるという。つまり食糧に困って多くの人が死ぬということであろう。パニックものの映画をよく観る。人類は自然に勝てない。みんな仲良く死ぬのみだ。

 

新緑のシーズンだ。近くの山にハイキングなどに出かけて、自然のありがたみを感じる連休にしよう。