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ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

この選択肢はどうだろう 『戦争する国にしないための中立国入門』を読む。

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安倍首相は南スーダンでのPKO活動で自衛隊に死者が出た場合、辞任する意向を示したようだ。国連南スーダンの治安は非常に悪化しているとして警戒を呼びかけている。南スーダンでの活動報告書も破棄されたとかで防衛省隠蔽工作が疑われている。

 

いよいよ自衛隊の死を肌で感じる事態にまでなってきたか。遠い国の紛争解決を手伝いに行って、武力衝突が起こる可能性がでてくるとは、防衛大に進んだ高校時代の同級生の口にしていた「専守防衛」がむなしく聞こえる。

 

政府は「国民が戦争に巻き込まれないために」憲法第9条の解釈を変えて、集団的自衛権の行使を自衛隊に許した。しかし、国民が戦争に巻き込まれない方法とは集団的自衛権だけしかないのか。他の方法よりもベストな選択なのか。他の可能性も考えた結果の結論なのか。

 

 

平和ボケに毒された私の頭では、安保法制を読んでみても、政府見解を読んでみても、どこか別の国の言葉のようで頭に全く入ってこない。

 

戦争に巻き込まれない方法を考えるといつも思い浮かぶのは「永世中立国」だ。この選択肢は駄目なのか。スイスなんかは、19世紀以降フランス・ドイツ・イタリアといった列強に挟まれながら独自の道を行く国だ。EUにすら入っていない。一方でとてつもなく強い軍隊を持っているとも聞く。日本と同じでPKOにも積極的な国のイメージだ。

 

確かに、強いアメリカの後ろにべったりくっついて、ご機嫌を伺っているほうが日本人の性格にはぴったりだ。しかし、あんまりお偉いさんを喜ばせようと思って調子に乗っていると、ドジを踏む。日本ドラマの典型だ。我々国民を守る自衛隊の命が懸かっている。ドラマのような結末は避けたい。

 

本書は、戦争音痴の私にもわかりやすく中立国について教えてくれる。中立国とはどんな国なのか。日本は中立国に向いているのか。そんな事を考えながら読んでみた。

 

ノート1:多様な中立国

中立国を名乗っている国は、歴史的に大国間に挟まれた小国が多い。国家間の戦争に巻き込まれない、侵略されないための国家戦略として中立を選んだ。スイスやオーストリアのように永世中立国として周辺国からの承認を得て誕生した国もあれば、一方的に中立国であると宣言する国もある。また、一貫して中立を重視する永世中立国に対して、状況に応じて上手く中立主義を使う国家もある(スウェーデンなど)。

 

中立国の義務は自国の独立の維持と、交戦国への支援の防止だ。交戦国による戦闘行為や戦争目的の通過を固く禁じている。それでも武装は必ずしも義務づけられていない。つまり侵略を防ぎ独立を維持するのに非武装中立を掲げる国もある(コスタリカ)。また、中立の考え方も国によって異なり、軍事的な中立と政治的な中立を分けるケースもある。イデオロギーは西欧寄りだが、軍事同盟を結ばないなど明確に線引きをしている(スイス)。

 

ノート2:国際協調主義との整合性

国連NATOといった多国間からなる組織のベースは集団安全保障体制であり、突き詰めれば集団的自衛権である。他国の紛争に無関心ではいられない。この点で中立主義と集団安全保障とは矛盾するという見解が一般的だ。しかしながら、スイス、オーストリアをはじめ多くの中立国は、集団安全保障体制と併存を選択している。

 

今や戦争は国家間ではなく地域紛争になっている。グローバリゼーションの中で、他国の利害が自国の利害に結びつく。それゆえ、自国の立法が許す範囲で国際協調主義をとっている。

 

例えば、これらの国は国連PKO活動などで重要な役割を果たしてきた。また、戦争当事者の架け橋、調停役を担っている。ジュネーブやウィーンには国際機関が多い。休戦条約調印の場としても選ばれる。

 

PKOではその中立性・公平性の高い活動に限って活動している。紛争当事者同士が国連の介入に同意した活動のみに参加している。情勢が不安定で武力衝突の可能性があるPKO(平和強制的PKO)には参加しない。※ちなみにスイスもオーストリアも南スーダンには派遣していない。

 

また、国連安保理による集団的な措置に対しても積極的に参加している。しかし軍事協力ではなく経済制裁などに限定される。

 

ノート3:日本が中立国になる可能性

日本国憲法が発効してから度々日本の中立国の議論は巻き起こっている。議論になるのは9条の解釈だ。

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

議論は二つある。武力行使がどこまで可能か。そして武力行使が一切できない場合、どうやって自国を侵略から守るか。 

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戦争を放棄した国がどうやって自国を守るのか。当初は、国連の集団安全保障体制を頼りにしていたが米ソ冷戦により安保理は形骸化してしまい機能しなかった。それゆえアメリカとの同盟を結び戦略的に基地を提供する代わりに、侵略から守ってもらうというのが日本の考えだった。

 

しかし冷戦は終わり、国際紛争が増えた。中国の台頭、アメリカの戦略転換などもあり、日本も自国防衛の戦略の見直しを迫られている状況だ。21世紀になってから徐々に自衛隊の海外派遣は頻度を増している。そして今、政府の戦略は9条の解釈を見直し、集団安全保障体制に積極的に参加する道を選んだ。

 

冷戦後の日本の安全保障政策について、数名の国際法学者が憲法9条を守るという立場から、日本の「非武装・永世中立国」を提案している。①自衛隊を軍事部門と非軍事部門に分け、国連軍に移管させる。②国内は非武装永世中立に関する基本法を制定し対外的に宣言する。③日本の安全保障は永世中立条約によって担保される。

 

少し現実からかけ離れた主張ではあるが、これによって、憲法9条は守られ、日本による侵略の可能性がないことを証明でき、安全保障が保たれると期待している。これが上手くいけば平時・戦時に敵対される事もなく、国際貢献もできる。世界の見本となると主張する。

 

感想

楽観的な議論ではある。世界の国を信用しすぎな感じがする。やはり非武装化は怖い。自国を守るための武力行使は欲しいなと思う。あとは9条がどこまで自己防衛をOKとするかだと思うのだが。やられてから反撃するしかできないのではあまりに無力だ。

 

そもそも、他国が「日本を侵略する」意図は何なのかとも思ってしまう。今日、国家が他国を侵略すれば、他の国からの経済制裁や非難決議によって道義的なリスクを覆うのは確実だ。そうまでして欲しい理由が知りたい。

 

中国よ、日本が欲しいかい?と聞きたい。領土をもらって中国人を住まわせるには少し小さい。日本人を支配したいと思うなら、それは今の時代不可能だろう。誰も従わない。じゃあ武力行使だとなれば、戦争コストに見合うだけの価値があるのかと考えれば、国際的なイメージに傷がつく。やめておいたらいい。という結論に達する気がする。

 

テロの場合はどうだろう。テロが起こる可能性はゼロではない。しかし、テロ事件の例を見ても、テロによって国家転覆した先進国は聞いたことがない。テロが起こったら、他の国に習って報復宣言して自衛隊を中東に投入するか。できない。未然に防ぐしかない。テロ対策は日本の有能な警察に任せるしかない。

 

中立であり、どの同盟にも属さない。他国とは公平に付き合う。侵略する奴は叩く。ごますりの得意な日本人のイメージとはほど遠いが、私の理想はこれだな。