ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

ストレスは親の勲章か『子育てに効くマインドフルネス』を読む。

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子どもが保育園に入って1ヵ月が経つ。1歳半からのスタートだったため、なかなか決まらなかった。いわゆる待機児童で、3月までは託児所で数時間預かってもらっていた。

 

申請書を持って役所に行くと「候補を5つ記入してください」と言われた。「5つもないですよ。」と応えると「そうすると難しいです。とにかく近場の保育園は希望として全部記入してください」と脅してくる。

 

返す刀で「いやいや。こっちも大事な子どもを預かるんだから、近いという理由だけで候補を絞っているわけではないので、書きません」ときっぱり断ってやった。全くこれだから父親はという顔をしたあと、「本日は奥さまは一緒じゃないのですか」と聞いてくる。

 

「妻は仕事復帰して忙しいのです。会社経営している私のほうが自由に動けるので来ました」と応えた。「保育園選びは父親ではダメだ」と思われているようで悔しかった。

 

結局、絞りに絞った3候補を提出し、最終選考の結果、見事、第二候補の保育園に入れたのである。ようやく、子どもを預けて夫婦揃ってがっつり働く機会を得たのだ。

 

子育てによる妻のストレスは半端ではなく、そのストレスのはけ口となった私の我慢も限界に来ていた。少しでも自分の時間、子どもから解放された時間を欲するのは、親としては失格なのだろうか。

 

「自分たちで産んだのだから、責任もって育てろよ」と聞こえてくる。しかし、子育ては別に親だけがやるものでもあるまい。そんなこと言ったら、20歳までは未成年なんだから手元に置いて教育しろよという話になる。子育ては社会の務めである。できるだけ、社会全体で子育てをサポートする仕組みがあればと願うばかりだ。

 

我々のストレスの主な原因は人間関係にある。苦手な人がいるだけで空気は重くなり、上司の顔色で気分は鬱になる。他人であるかぎり、人間関係を絶てばそれでおしまい。

 

しかし、親子関係、夫婦関係はそうは行くまい。子どもが嫌いではないが、やはり言うことを聞かない子どもには手を焼く。思い通りに動かない苛立ちは、ストレスになり夫婦関係、ひいては他の人間関係にも影響を及ぼすのだろう。

 

本書は、最近ブームになっているマインドフルネスを子育てでも実践しようということで、具体的なマインドフルネスを紹介してくれている。私個人は、実践にはあまり興味なく、子育てに対する考え方を学びたかった。

 

子どもとの距離を置くことしか、私は解決策をしらない。保育園で8時間も預けることで回避しようとするストレスを、自分たちで解決できまいか。

 

ノート1:あれこれ考えると鬱になる?

鬱の原因になるのは脳のデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が関係している。DMNは意識的な活動をしていない時に働く脳の状態である。つまり脳のアイドリング状態だ。この状態は、意識的に活動しているときよりも多くのエネルギーを使うことが知られている。例えば、過去の出来事、辛い思い出、将来への不安などを無意識に考えてしまうと、さらに気分が落ち込んだり、イライラしたりするようになる。子どもと遊んでいても、無意識に将来のことなどを考えると、心ここにあらずの状態で目の前の子どもに集中できていない。

 

忙しい中で子どもの面倒を見るのが嫌だったり、まったく言うことを聞かない子どもを叱ったりしている親は、それを避けるのではなくあえて集中して子育てをしてみることを薦める。一緒に遊んでみて子どもの動きを観察してみる。怒ったときの子どもの状態をよく見てみる。深く入り込むことで、ストレスは逆に減るのだ。

 

ノート2:マインドフルネスは今に集中すること

マインドフルネスとは「今、ここを生きること」である。今ここで起きていることに注意して、それに対して評価を加えずに受け入れる状態だ。思考で頭がいっぱいの状態では、目の前のことを正しく捉えることができない。目の前のことが見えていない。

 

今行っていることよりも、頭で考えていることに注意がいくので、実際には起こっていないが、「起こるかもしれない」「過去に起こってしまった」バーチャルな世界で生きている感覚になる。

 

特に、大人は言葉を覚えると抽象的な思考に入り込む傾向がある。「思考の陥穽」に抜け出せないでいると、何をしていても集中力がなく、不安やイライラから逃れることができなくなってしまう。

 

それを防ぐにはマインドフルネスになる練習が必要だ。今、ここで起きている事に集中する練習だ。

 

一例を挙げれば、毎日15分間、2回、目を閉じて近くで聞こえる物音、遠くで聞こえる物音、体内から聞こえる音に注意を向けてみる。瞑想も同じ要領である。呼吸に意識を集中させる。吸った、吐いたを数えたり、お腹の膨らみを感じたりすることで、今起こっていることに集中する練習になるのだという。

 

その時に、また無意識に考えが浮かんだらどうするか。それを気づきとして、ラベリングするとよい。「今、また将来について不安になっていた」といった具合に自分の感情や思考を客観的に見るように心がけるのがよい。

 

これを継続していくと、メタ認知力(物事を俯瞰的に見る力)と、客観的に見る力(評価しない力)がつく。起きていることに対して、ありのまま受け入れることができるようになると、子どもへの対応も変わる。

 

子どもに対して、「こういう性格だ」「頭がいい、悪い」といった評価をしなくなる。自分が怒ったり怒鳴ったりしたときのことを、客観的にみることが可能になる。「今自分は、子どもにイライラをぶつけている」といった感じで実況できるようになる。

 

ノート3:子どもの心に気づくために集中する

子どものストレスは親のストレスが原因である。親は子どもにとってのよりどころであるからだ。子どもの心に気づくためには2つの事を心がけるべきだ。一つは、子どもの行動、感情に注意を払うこと。二つめは、タッチング、ふれあいを増やすことだ。

 

第一に、子どもの表情や行動を観察してみる。怒るのではなく、「なぜこの子はこういう行動をとったのか」に注目してみると、より注意深く観るようになる。それによって子どもの心に気づき、無用なイライラを減らすことができる。

 

第二に、スキンシップの大切さだ。ふれあいこそが愛着表現である。抱っこ・スキンシップで感じる感覚やぬくもりが、子どもの心に安心・安全を抱かせる。そうした心が、両親との信頼関係を育むのだ。

 

子育てを楽しく、ストレスなく行うには、マインドフルネスによって自分の心に気づき、子どもの心に気づくことが大切である。子育てを避けるのではなく、子育てに集中する練習が必要である。

 

4月に入園してすぐ、娘は熱を出して1週間休んだ。治ったと思って2日間通ったら、また別の風邪をひいた。「熱があるときは預けられません」との、お達しの通り、結局私が仕事を休んで面倒を見た。おかげで風邪までもらってしまった。せっかく保育園に入れたのに、風邪ばかりひいていたので、1週間ほどしか通っていない。そしてゴールデンウィークだ。

 

どんなに子どもを預けても最終的な子育ての責任は親にある。逃げ回ってばかりいないで、子育てを楽しまなければならない。自分の仕事と、子育て、どっちを大事にするかというのは馬鹿らしい。どっちも大事で、どっちにも集中しなければならない。いっそ、子どもを職場に連れて行き、遊ばせておこうか。

 

将来について考えすぎると不安になる。将来への人生設計も大事だが、今を生きることを忘れると楽しくない。今しか生きていない子どもから学ぶことも大きい。