ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

国の未来は若い世代が創る『ミッション建国』を読む。

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経営していると目標未達というのは、非常に大きな意味がある。プロジェクトを成功させなければ、会社が潰れる可能性もあるからだ。

私生活だって同じだ。目標未達は痛い。30万円かけて通った英会話で、ほとんど話せなかったら、話す機会を増やせなかったら、投資失敗だ。奥さんが財布を握ってさえいようもんなら、もう二度と英会話になんて通わせてもらえない。むしろ自分の使える予算は激減するだろう。

このように、「目標を達成できない」ということは重大なことなのだ。

 

「何を言う。君が思っているより大変なんだ。」そう言い訳すれば、返す刀で「大変なのになんでそんな目標を立てたの?そもそも考えが甘いんじゃない?」と切られるのがおちだ。すぐ反省し、行動や考えを改善しなければならない。

 

しかし、この世の中には何度失敗しても、「また次回がんばります」が通じる組織があるようだ。日本政府は17年度末までに待機児童「ゼロ」を目標としていたが、実現するのが難しく3年先送りするそうだ。

国民が税金を払っている限り、ばんばん国債を発行する限り予算は減らないと思っているから、彼らは懲りないのだろうか?できもしないのに「ゼロ」だって見栄切って、難しいから先送りしますって。「失敗、失敗」「次、次」の結果が1000兆を超える借金だ。

いかに政府という組織が、世間から浮いた存在かがわかる。

 

 

国民はそんなにアホじゃないから、浮世離れの怪物になんて頼っていられない。無駄な消費を抑え、コツコツ貯蓄し、自分たちで自分たちを守るのだ。とにかく憲法に書いてある最低限の保証だけは国にお願いするしかないのだが。

 

毎回毎回、絶望するような政治のニュースに愛想をつかしていると、理想的なリーダーを求めたくなる。現実にはいないのなら、フィクションでも構わない。

 

楡周平の『ミッション建国』を読んだ。エンタテイメント性抜群の小説を書く彼の作品は、フィクションの中にもリアルな社会を仔細に描写している。それゆえに、停滞する日本の政治という現実に、彼ならではの解決策をちりばめてフィクションに仕上げたという感じだ。主人公も30代の政治家だ。若い世代がどのように未来の日本を創っていくか。考えさせられる作品である。

 

ノート1:あらすじ

日民党の甲斐は、30代で青年局長になった若手政治家のホープだ。父親も長期政権を務めた元首相、知名度も抜群のサラブレッドである。ある日、甲斐は日民党の重鎮である多賀谷元総理に呼ばれて、次世代の日本を創るミッションを授かった。

 

同じ日民党の若手政治家・新町と協力しながら、国家最大の課題である少子化と人口減少を食い止めるための施策を作り上げていく。しかし、党の勉強会を開いたことがきっかけで、先輩議員による圧力や、派閥争いによって施策の実行が困難な状況に陥る。これまでの政府のやりかたを改め新しい方法をとる甲斐に対して、おもしろく思っていないのだ。

 

一方、経営者・学者を含めた経済対策会議では、新しい雇用創出プランが決定していた。年俸制の導入など、経営者がクビを切りやすくして、労働市場をより流動化させようというのである。既定路線の会議で、IT企業の若き経営者・神野だけは雇用者を守るために反対を唱えるも覆せず、自ら新しい事業を興す決意をする。

 

神野の存在を知った甲斐は、神野に接触し、官民で若い世代による新しい日本の建国を提案する。甲斐と神野は、オリンピック後の施設活用、子育て住宅、無料の通信教育、スマートアグリによる一次産業の再興など、少子化を食い止める施策をさらに練っていく。

 

あとはどう実行するか。日民党内では改革は不可能と判断した甲斐は、神野や多賀谷のアドバイスを受け入れ東京都知事への立候補を思い立つのだった。1国並みの予算のある大都市・東京から日本を変える。そこに可能性を見出すのだった。

 

 

憲法改正集団的自衛権、中国の脅威、オリンピック、そして少子化、日本の現在の課題が次々に登場する。個々の事案に対する政府の対応もリアルに近い。党内の黒い部分、権力闘争、官僚の日和見主義など、小説とはいえここまで書かれると、フィクションに感じない。あらためて日本は表現の自由は保障されていると感じざるを得ない。

 

主人公の甲斐のモデルは疑いもなく、小泉進次郎議員だろう。私は彼と同い年だったと記憶している。そのため、同世代としては彼を応援している一人だ。彼がどう動いているかはともかく、若き政治家はこれから40~50年と生きる世代だ。あと10~20年でこの世からいなくなる先生よりも先を見据えて国家を考えてほしいといつも思う。

 

政治家や官僚は我々庶民とは感覚が違う。それは仕方がない。しかし、年代だけは誰もが共通して認識できる。自分がいない将来を考える人なんてまずいない。だから70代の政治家が思う国の将来はせいぜい20年だろう。小泉氏のような若手が考える未来は40年、50年先なのだ。我々若手は、やはり50年後を見ないといけない。

 

自分たちがじじい、ばばあになったとき、若者から「あの世代のおかげで国家の危機を乗り越えた」と言われたい。民間関わらず、社会のために自分を役立てる。これが我々若手のミッションではなかろうか。国に頼らず国を支える。福沢諭吉だ。

 

自分は自分の仕事をがんばろう。失敗は許されない。50年後、私のようなアホな人間にブログで悪口を書かれて死ぬのは嫌だ。

 

ミッション建国 (角川文庫)