ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

『中東複合危機から第三次世界大戦へ』を読む。

仕事が一段落ついたら海外旅行に行きたいと思っていたのに。最近の中東情勢の悪化と欧米でのテロ事件が、ビビり屋で小心者の私の気持ちを萎えさせる。旅行中にイスラム過激派なる連中に拉致されて、オレンジ色の服を着させられて、首にナイフを突きつけられ、日本政府に身代金を払うように涙ながらに哀願する妄想が、海外旅行という誰もが金と時間さえあれば謳歌できる楽しみを不安なものにしてしまうのである。

 

一体全体、今中東・イスラム世界はどうなっているのか。私は、いつかは安心してトルコあたりを周遊できる望みを持ちつつ、中東情勢についての本を探した。目についたのは【第三次世界大戦へ】の文字。ああ、もはや絶望的だ。私がトルコに行ける日は来ないような気がする。世界戦争の発端になりうる地域はシリア。トルコの隣国ではないか。

 

ノート1:シリア内戦は三つ巴の戦い

① アサド政権(シーア派イスラム

② 反政府軍自由シリア軍

③ IS(イスラム国:スンナ派過激思想)

  • 国際的なテロ集団。今や世界共通の敵とされている。
  • イラク北部とシリアを拠点にしたイスラム国家樹立。(勝手にしてる)
  • ①②内戦の混乱に乗じて勢力を拡大中。

 

ノート2:内戦の本質

① 世界規模に影響

② 民主国家・国民国家の破綻

③ 自由主義・民主主義の限界

 独裁国家の崩壊→内部の権力争い→政治の混乱→テロ・武力組織の登場→打倒テロという大義名分で大国が介入→権威主義の復活→人権抑圧・民主主義の否定

 

ノート3:覇権争いをする大国

① ロシア:プーチン大統領

② トルコ:エルドアン大統領

③ イラン:ハーメイニー最高指導者

  •  シーア派イスラム革命の輸出:シリア・イラクにまたがるシーア派帝国を作る。
  • シーア派のアサド政権をサポート:イランの革命防衛軍がアサド政権側で戦っている。アサド政権維持のため、ロシアとも協調。
  • ウィーン合意で、核開発をめぐる国際的な孤立が解消。石油・天然ガスが豊富に採掘できる資源大国であり、海外から見ても魅力的な市場。

 

読んでいて気になったのは、欧米のプレゼンスの低下である。もはや中東情勢は、かつて権勢を誇ったアメリカやヨーロッパ列強の影が薄れ、歴史的栄光を取り戻すべく権威主義を振りかざすオスマン帝国・ペルシア帝国・ロシア帝国の覇権争いへと発展している。

 

欧米が提唱してきた民主主義・自由主義の概念は失敗だったのか。自分の思想・文化・宗教・生き方が相手のそれを否定することになるという皮肉。それによって、命が脅かされることになる。それだったら自由は制限してもいいから、命を守ってくれる強い国家が欲しいということになる。ロックやホッブスが言っていたのはこのことだったのか。結局、人間は自由を手に入れると争うから、上からガツンと、「やめなさい」と言ってくれるパターナリズム的な権威に頼らざるを得ない。

 

いっそのこと帝国主義を主張する3国でもう一度、この地域の線引きをしたらよろしい。トルコの周辺にはスンナ派イスラムの自治を作る。イラク南部にはシーア派が暮らせる自治区を作る。真ん中あたりにはクルド人を全員集めて、独立国を作ってあげる。資源が豊富な地域は、3国で分割する。難民として人がこれだけ動いているのだから、人を動かすのはさほど難しくないだろう。同質な集団同士である一カ所に集まって暮らせる場所を提供すべきだ。すぐには、自立した国家なんか作れるわけ無いのだから、帝国の属国になって生活を保障してもらうのがよい。

 

もしくは、何個か全く違う国を作って行きたい国を人民に決めさせるのはどうだろう。Aはイスラム法で、自由が少なくて、でも資源があります。Bはスンナ派イスラムでも比較的自由度は高いです。Cは宗教は関係なく入れます。しかもヨーロッパ型の自由度です。その代わり、権利をめぐって争いは耐えません。さあどこに行きたいですか。魅力的でない国や組織は、人が住もうと思わないので自滅するだろう。色んな国の形を提示して、人民に選んでもらう。こっちの案も悪くない。これは3帝国だけだと無理だから、マーケット感覚の優れた欧米がリードしてもらったらいい。

 

欧米型の自由主義・民主主義で育った私としては、自由を愛しているし、自分の選択がすべてだと思っている。ただ意見の違う人を正そうと思わず、おのおのが邪魔せずに自分らしく生きられたらそれでいい。そうした道を探ってもらいたいものだ。