『税金逃れの衝撃』を読む。
仕事に就いた頃、給料から住民税を引かれていた。住民税は前年の所得に対してかかる税金だから、新卒で入ったその年に取られることはない。実家に返った時、役所で働いていた母に給与明細を見せて、事が発覚した。会社の総務に伝えてお金は戻ってきたが、それ以降給与明細をちゃんと見るようになった。税金の仕組みがわかっていないと、気づかないうちにより多く取られるのではないか。そんな不安が税金のニュースが流れるたびに思う。
思えば、毎年それなりの税を納めているのに、サービスとして返ってきたと感じるのはほとんどない。病院で保険がきいて安くなった時くらいだ。逆に、税金払っているのになんだこのサービスは、と嘆きたくなる時の方が多い。最近では夜遅くに運転していただけで警察に呼び止められ、職務質問され、あげく飲酒運転の疑いをかけられる始末。犯罪防止や交通事故防止のために日夜がんばってくれていることはありがたいが、あれだけ車が走っていてなぜ自分。自分の人相と、運の悪さを呪いたくなる。せめて「夜遅くお疲れ様です。」の一言くらいくれよ。筆が進むにつれ、愚痴になってしまった。
税の見返りを求めるのは野暮ったいと思うが、できることなら価値を得られないものにはびた一文払いたくない。いかに払わずに自分のお金にできるのか。パナマ文書の発覚で、避難を浴びている租税回避とはどうやって行われるのか。そんな興味から手に取ったのは『税金逃れの衝撃』である。
ノート1:租税回避が可能な理由
- 租税条約:他国の税制に口出しできない。主権国家の権利。法人税なし、源泉所得税ゼロの国がある限り、租税回避はできる。
- 租税法律主義の採用:法律にしたがって税を徴収すること。たとえ租税回避の意図が明確でも、法律に抵触しなければ脱税とはいえない。法の抜け穴を利用される。
※税金逃れの意図があったと認識されても、被告が数日の差で海外生活が長いとの理由で課税が認められないという判決もある。
ノート2:租税回避が可能になる条件
- 信託:ペーパーカンパニー(トンネル会社)を作成する場合、登録代理人に任せてもOK。誰かにやってもらえる。自分の名前が出てこない。
- 秘密性:絶対に個人の特定をさせない秘密口座。スイスなどでは国家政策として銀行員にクライアントの秘密保持を徹底させている。
ノート3:租税回避のプロセス(Googleの事例)
ノート4:租税回避を防ぐには
- グローバルタックスの設定:世界各国で個人のお金の流れを把握して、課税をする体制作り。要は、租税条約の国家の租税権を棚上げしましょうという話。
- 法人税・所得税の累進性の強化。多くもらっている人からもっと多く税金を取りましょうという話。
やっぱり租税回避はできるのだ、合法的に。そして租税回避を促しているのは先進国なのだ、確信犯的に。先進国の金融機関や法律事務所がクライアントのお金を守るために法律の穴を見つけてプロセスを作ってくれる。それに対して、先進国政府は有効な手段を出していない。社会福祉も大事だが、経済の活性化も大事だから。
果たして、なぜにこうも富裕層は税金を払いたくないのか。①自分の稼いだ金を政府に取られたくない。②収益を増やして従業員、顧客に返したい。③政府に使ってもらうより、自分たちで社会のために使いたい。お金持ちの心理はわからないが、②③が多数であることを期待したい。い。いや、そうに決まっている。世の中のために人一倍働いて手にした富なのだから。
お金の純粋な価値を高めるなら、政府に使ってもらったほうがいいのか、それとも開発や投資に回したほうがいいのか。私は断然に後者を支持する。もちろん税金を全否定するつもりはない。警察による治安維持とか、道路づくりとか、明らかに個人ではとても手に負えないものはみんなでお金出しあって作ろうよという公共心もしっかり持ち合わせている。
ただどうしても、自分の生活が豊かになったと感じる時は、政府のマイナンバー発行よりLINEのアカウントを手に入れたときだし、認可保育園に娘を入れるときより、家事をしてくれるルンバを購入するときなのだ。
今国が背負っている借金は1000兆円以上。もはや私一人に対して1000万以上も借金してやがる。足りないからもう少し払ってください。とは何事か。ちゃんと使ってくれないのなら、世のために必死で働いている企業に堂々と使ってもらいたい。無理して企業から、富裕層から搾り取る策を考えるよりも、ちょっとでも公共サービスの不便を我慢してでも彼らの未来のサービスに期待したい。社会保障のためのお金が足りない?だったら、ちまちま消費税で徴収するのじゃなくて、各々が貯金を削って医療費払ってくださいとお願いしてくれ。ある程度蓄えがあるだろうに。貯金がなくなった順番に生活保護を受ければよろしい。
政府に金がないのに、あれもこれもとお願いするのも酷だ。結局ないのだから、金も能力も。
読後、租税回避について理解が深まったどころか、お国への文句になってしまった。お金は理性を破壊していく。