ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

地球の歴史から温暖化を考える『人類と気候の10万年史』を読む。

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気づけばもうゴールデンウィークだ。今年も特に予定を立てなかった。地域によって連休をずらして混雑を解消するなんていう話は、もはや聞かなくなった。頓挫したのだろうか。渋滞も嫌い、行列も嫌い。『どこが人口減少社会だ、もっと人なんか減ればいい』と思わず毒づいてしまうので、人が集まるところは避けて近場で娘と遊ぶことにした。草むらで寝っ転がりながら小説でも読むとしよう。

 

休みと言えば、今年も花見ができなかった。ちょうど見頃の時期にとんでもない風雨によって散ってしまった。その前の週末は、娘が熱を出して終日家から7分くらいの桜を眺めたのが最後だ。春らしい心地がしないまま、外を歩けばみんな夏服である。四季の移ろいはどこに行ったのだろうか。

 

温暖化によって気温はますます上昇している。温室効果ガスを抑えないと、21世紀末には約2.6~4.8℃上昇するそうだ。(気象庁ホームページ)毎回ニュースで流れる、帰省ラッシュでの渋滞の映像を見ると、なるほどCO2がどんどん増えていくわけだと思うのである。地球温暖化は人間の活動によるもの、というのが定説であるようだ。であれば人口減の日本は、温室効果ガス削減に貢献していると言えるのか。またくだらない話題からあれこれ考え始めて、気候についての本を読んでみることにした。

 

温暖化を考える時、20世紀と21世紀を比べることが多い。もしくは長くても人類誕生後の地球を想定している。しかしながら、地球の歴史は遙か大昔までさかのぼれるのだ。それこそ億年単位だ。人類が警告している気温上昇は、地球の歴史規模で見たとき果たして異常なのか。本書は、温暖化問題を考える上で、人類の歴史ではなく、地球の歴史という別の視点を与えてくれる。

 

ノート1:地球の歴史からみた現代

地球を5億年前までさかのぼり、気温を調べた結果、現代は寒冷であるとい結論に達する。例えば2億1000万年前は、今より10℃気温が高い。5億年の間、激しい気候変動を何度も繰り返してきた。温暖な時代もあったが、ある限度以上の温暖化は起こっていない。

 

さらに短く、過去80万年を振り返ると、9割は氷期である。現代と同等に温かい時代は1割である。現代は氷期氷期の間である比較的温かい間氷期と呼ばれる。

 

これまでの研究から地球は10万年単位で氷期と温暖期を繰り返すことがわかっている。過去の間氷期は2万3000年くらいである。過去、氷期の終わりには急激な温暖化を記録する。地球の温暖化は人間活動の要因以外にも、地球内のパワーによるところが大きい。現代は間氷期の終わり頃であり、温暖化よりも新たな氷期に突入すると予測される。

 

ノート2:気候変動にパターンはあるのか

ミランコビッチ理論は気候変動の原因を説明する、最も説得力のある理論である。ミランコビッチ理論によれば、地球の公転・自転が気候変動に大きく関係している。

 

地球の公転軌道の変化とは次の通りだ。太陽の周りを回る地球の軌道は、楕円から真円に変化する。楕円の時は、夏に太陽に近づきエネルギーを吸収するため、温暖になる。真円に近づけば近づくほど寒冷化する。それが10万年単位で起きている。公転に加えて、地球の自転、つまり地軸の傾きと、向きも定期的に変化する。太陽に近づく部分が変わるので当然、気候に影響する。

 

大枠として、10万年単位で氷期に入ることはミランコビッチ理論で予測できるが、具体的にいつから氷期に入るか、寒暖の差が激しい不安定な気候がどのくらい続くのかはわからない。

 

ノート3:より正確に気候の歴史を知る調査

地質学のより正確な時間を知るために、著者のプロジェクトチームは福井県水月湖から見つかった縞模様の堆積物の調査を行っている。水月湖は世界にもまれに見るほど、ピュアな堆積物が入手できる。理由としては湖底に酸素がなく、堆積物を浸食する生物が少ないことが挙げられる。

 

その地層に含まれる花粉の化石を通して、その時代の植物を知ることができる。植物によってその時代の気候がわかる。ある地層からは針葉樹が、別の層からは広葉樹がでれば、時代と共に気候が変わったことが把握できるというわけである。福井県あたりでも、時代によって生えている植物が違うことが明らかになった。

 

ノート4:気候変動と人類の活動の関係

10万年ごとに氷期が来る。現代は間氷期の終わりである。しかし、気温は上昇し続けている。これはどういうことか。人類の活動が氷期を遅らせているという説がある。根拠になっているのは、人類登場以降、メタンとCO2が増えているという事実である。

 

ミランコビッチ理論では、氷期に入るにしたがってメタンとCO2も減少するはずだった。メタンは水田農業、CO2は森林伐採と関係があるようだ。人間が爆発的な人口増加によって安定的な食料を確保し、住む場所を確保するために取った行動が、とっくに来ていたはずの氷期を遅らせているという考えもある。

 

一方で、地球自体が氷期の終わりに起こす温暖化の一つとも考えられる。人間の活動がどの程度、大自然の現象を壊すことができるかはわからない。

 

寒冷化を考えると、異常気象が毎年起こる場合には、先進国といえども大きな被害を受けるのは間違いない。農耕は食料不足に弱い。一方で、狩猟は気候の変動によって、狩るべき獲物を変えることができるため、適応できる。

 

氷期を経験した人類の祖先は、そのことを熟知して農耕をあえて起こさなかったとの見方もできる。人類の発展と農耕という通説とは相容れない意見ではあるが、氷期に備えて、昔の人類の生活、原住民の知恵から学ぶこともできるかもしれない。

 

もうすでに来ているはずの氷期を、人類の進歩が遅らせていた。これが事実であるならば、温暖化はむしろ正義である。それをやめたら、寒い氷期に突入するかもしれないのだ。とはいえ、人間が自然を破壊し、生態系を崩してきたのも事実である。地球が予測通りに動かなくなる原因を作ったのも頷ける。

 

個人的には温かい方がいいので、できるならこのまま快適な気候で生きていきたいものである。

 

著者によれば、1993年の冷夏のような現象が2年、3年と続いたらいくら先進国といえども多くの被害を受けることになるという。つまり食糧に困って多くの人が死ぬということであろう。パニックものの映画をよく観る。人類は自然に勝てない。みんな仲良く死ぬのみだ。

 

新緑のシーズンだ。近くの山にハイキングなどに出かけて、自然のありがたみを感じる連休にしよう。