ばんちゃんの読書日記~新書・文庫篇~

読んだ本の感想や勉強になったことをメモするための読書日記です。

混沌がもたらすもの『応仁の乱』を読む。

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応仁の乱って!」思わず声が出てしまった。「人よむなしい」で覚えたあの1467年の大乱の文字が、20年の時を超えて私の目の前に現れたのだ。高校以来久しぶりに出くわした懐かしい響きからか、思わず手に取ってしまった。

 

高校生とは大概こんなものだろうと思うのだが、応仁の乱という言葉が、なぜかかっこよく聞こえた。平成という元号よりも、昔の元号のほうがイケてるな、と思ったものだ。

 

さて20年経って、相変わらず「懐かしい」なんて興奮しているところを客観的に見ると、人間の本質は変わらないのだと思ってしまう。しかし、こっちも高校生じゃない、一応社会の荒波に揉まれてきた大人だ。「懐かしい」だけで終わらせてなるものか。

 

なぜ今更、新書になったのか?新しい発見でもされたのか?という疑問がわいた。と同時に、応仁の乱って何だったのか、という自分の無知に改めて気づかされた。これも何かの縁。久々に日本史を勉強しようかと、大人になった私は再び応仁の乱と相まみえることとなった。

 

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本当に民意は反映されているのか 『多数決を疑う』を読む。

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先日のオバマ大統領の演説は素晴らしかった。大統領候補のキャンペーンでの彼の演説を目の当たりにして以来、個人的にひいきにしている。彼の8年間の功績の評価はアメリカ人に任せよう。核なき世界を訴えノーベル平和賞をもらい、アメリカ大統領として初めて被爆地・広島にも訪問した。そしてアメリカで初めて皆保険制度を築こうとした。自由と平等の国らしいリーダーだと感じた。

 

かたやトランプ大統領である。彼はオバマ大統領と正反対。よくもまあ、同じ国の大統領がここまで違うかと感心する。政策は仕方がないとしても、振る舞い、言動がルードだし、ナショナリズム丸出しだ。大統領はアメリカ人の代表者だという。選挙結果はアメリカ人の民意だとも言う。

 

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アメリカ人の知り合いで、トランプを支持する人は一人もいなかった。彼らの落胆ぶりは見ていて痛々しかった。彼ら有権者の無力感を払拭するために、アメリカの選挙と民意について考えてみた。だいたい、これだけ複雑化した世の中なのに、「人民の一般意思」をまとめるのに二つしか選択肢がないのはおかしい。トランプかヒラリーか、「うんこ味のカレーとカレー味のうんこ、どっちがいい?」みたいな議論が先進国で起こっているのはなぜか。ビーフカレーが食べたい人の意見はどこに行ったのか。

 

本書は、自分の意見が選挙で反映されない、自分の意見を細かく表明できない、我々有権者のもどかしさを、社会選択理論という視点で説明してくれている。このブログでも取り上げたが、ポピュリズムという言葉が跋扈している。大衆の意見の反映が、過度に政治を不安定にしているという。

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両立は難しいのか 『仕事と家族』を読む。

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1月ほど気合いの入る月はない。仕事もオーバーペースだ。プライベートも気合い十分。さっさと1年の予定もざっくり決めて、海外旅行やイベントを考えている。

 

毎年1月は出だし好調だ。しかし結局、2月あたりからペースダウンし、5月病にかかるころには計画は絵に描いた餅になる。そして年末、思い起こして年始に立てた計画の半分も消化できずに年を越すことで焦り、次こそはと意気込む。これを繰り返して気がつけば30も半ばだ。私はこれを魔のサイクルと呼んでいる。

 

立てている計画を眺めてみると、だいたいが家族のことか、仕事のことだ。託児所通いの娘を保育園に入れて夫婦でがっつり働こうと思っている。娘が成長するにつれてお金はかかる。資産を増やさなければ。

 

自分の人間としての成長も大事だ。人は仕事で磨かれるという。どんな勉強をしようか。次のステップに進むには何をしたら良いのか。どこに時間とお金をかけようか。夫婦でしっかり自分たちのキャリアを考えたい。そのためにも子どもの世話ばかりもしていられない。

 

説明会にも参加して保育園の候補を2つに絞った。役所の人には5個書いてくださいと言われたが、5個も通わせたい所が見当たらない。認可保育園の枠なんかほとんどないのだから贅沢は言っていられないのはわかる。しかし、自分の大事な娘を他人に預けなければならないのだ。適当になんか決められるか。家族のことを考えると、そろそろ終の住処、マイホームをもった方がよいのかとも考える。娘が小学校にあがる前には決めたい。友達もできる年頃だろうし、住まいが変わってばかりでは可哀想だ。

 

本書は、「日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか」という副題がついている。過労死が社会問題になり、2017年は働きすぎが悪の根源とされ「俺、ほとんど寝てないぜ~」がイタい時代がやってくる。ともすれば相矛盾する仕事と家族を、両方充実させるにはどうしたらよいものか。日本の労働問題を家族社会学の視点を学ぼうと思う。

 

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厄介者の正体『ウイルスは生きている』を読む。

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胃腸風邪をひいてしまった。毎年冬には必ずと言っていいほど風邪をひく。自分の軟弱な体が恨めしい。まさか今回はお腹に来るとは。それでも風邪だったことはありがたい。今年はノロウイルスが流行しており、まさか自分もと思いながら病院に足を運んだ。ノロウイルスの特徴は高熱だと医者は教えてくれた。しかしながら、お腹の痛さは半端ではない。トイレとベッドの往復だった。

 

そういえば、鳥インフルエンザも猛威を振るっているそうだ。養鶏場での感染が確認されれば、すべての鶏が殺処分される。今年は酉年だ。さっそく縁起が悪い。トイレの中で、ウイルスという厄介な存在を恨みながら手にとった本書は、この厄介な存在が実は我々人間の進化に大きな影響を及ぼすことを私に教えてくれたのである。

 

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もしかしたら自分も…『愛着障害の克服』を読む。

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知り合いが、うつ病の一歩手前であると診断され休職しているそうだ。「一歩手前」とはどういうことかよくわからないが、友達がそう知らせてくれた。しばらく会っていない人の近況をこういう形で聞くのは良い心地はしない。

 

あんなに明るい男が、まさか、と思ってしまう。あまり深く突っ込んで聞くのもどうかと思い、「それは大変だ」とだけ返したが、職場の人間関係が原因らしい、と友達は付け加えた。上司に毎日のように怒られたのか、同僚から嫌がらせでも受けているのか、あれこれと想像をめぐらせてしまう。

 

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混乱の震源地を理解する 『中東崩壊』を読む。

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友達がエジプトに旅行に行くという。これだけテロや内戦が頻発している地域によく足が向くものだと関心する。私なんか何度もトルコに行こうと思い立っては、二の足を踏んでいる。「いつかは行ってみたいね~」が口癖の私に辟易している奥さんは「事件や事故はどこでも起こりうるよ」と諭してくる。確かにそうだろう。しかし、テロ・内戦・難民…あれだけ悲惨な状況を毎日伝えられれば、確率は高いと感じてもおかしくない。

 

「おまえもトルコに行けば?」との問いに「俺は中東には関わりたくないんでね」と答えると、この友達は「おまえが中東を避けても、中東がおまえに近づいてくるよ」と意味深なことを言う。本書は日経新聞社の中東担当者がまとめたレポートだ。各国の地政学的な位置づけ、政治、経済など細かく、そしてわかりやすくまとめてある。彼の言葉の真意を探りつつ読んでいくことにしよう。

 

ノート1:中東の影響力

 

中東の混乱が世界を危機に陥れている。中東が3つのものを世界に輸出しているからだ。1つは原油。日本は原油の80%を中東に頼っている。中東の情勢次第で世界経済が大きく傾く可能性がある。例えば、アジアへの原油輸送には中国を経由する。中国には世界の工場と言われる世界各国の製造拠点がある。原油が止められれば、世界の製造に支障をきたすだろう。

 

2つめはテロだ。中東はイスラム過激派を生み出す環境が整っている。インターネットの発達や移動の自由によってISのような過激思想がヨーロッパやアメリカに容易に輸送され、醸成され、国内でのテロに繋がっている。もはや、中東に行かなければ安全というものではなくなった。

 

3つめは難民だ。中東での内戦・紛争によって2015年には世界の難民・避難民の数は6530万人と、前年よりも580万人も増えた。受け入れる国にも限度があり、多くの命が救えない状況が続いている。一方で、難民への支援が増えれば、受け入れる国民の負担が増え、国内政治への不満が膨れあがる。ヨーロッパではそれによって移民排斥を支持する極右化の台頭を招いている。

 

ノート2:中東崩壊の原因

中東が世界の不安要素になった理由も3つ挙げられる。1つは、近代化への遅れだ。中東はその産油量の多さから、世界経済に不可欠な存在であった。多くの先進国はこぞって中東での油田開発を進めてきた。天然資源が豊富であるがゆえに、中東各国はオイルマネーだけで国民を食わせていけたのだ。余計な税金も取らなくてよければ、働かなくてもよい。いわゆるレンティ国家だった。それゆえ産油以外の産業を発展させることを怠ってきた。ところがアメリカでシェール革命が起こり、原油の供給量が需要を大きく上回ったことから原油価格が下落した。オイルマネーに頼ったツケがここに来て響いてきた。労働者の技術不足、他産業の育成失敗、血縁関係重視のビジネスが経済改革を困難にしている。それゆえ格差が生まれ、失業率もあがっていった。

 

2つめは民主化の失敗だ。2010年のアラブの春をきっかけに、中東各地で権威主義的な専制政治が次々に崩壊した。しかし、どの国も民主化に頓挫した。理由は、もともと人工的に作られた国境の中に多様な宗派、民族が存在しており、権力争いが勃発してしまったからだ。また、今まで政府の機能を担っていた官僚が追放されたことで、国を運営する術を知らない人達によって運営される危うい状況に陥っている。そうした混乱の中、イラク・シリアを中心に旧イラク政府の高官が中心になってISが誕生した。ISの方が国家的な機能を備えているのは偶然ではない。

 

最後に大国による中東政策だ。特にアメリカのリバランス政策は、中東へのアメリカ軍の関与を弱めたことでISの伸張を許した。シリアに至っては、内戦が始まった時にアメリカが様子見を決め込んだことで帝国復活を狙うロシアの介入を許した。今や中東で最も存在感があるのはロシアだ。イラン、サウジアラビア、トルコなど宗派、民族にかかわらず積極的に接近している。また中国が「一帯一路」政策としてインフラ整備や投資を積極的に行っている。一方で日本は、相変わらずのアメリカ追従、資源目的の外交を理由に、アラブ諸国からの信頼を失い、プレゼンスを発揮できていない。

 

ノート3:3つのシナリオ

本書では中東混乱の今後について3つのシナリオを描いている。1つめは、専制主義的な圧政が今後も続くケース。民主主義を植え付けることで混乱が拡大した。権威主義を振るうトルコ・ロシアが介入を深めれば、強権的支配は支持されるだろう。そうすれば中東の民主化は遅れることになる。

2つめは、各地で政府機能が麻痺して、政治的空白ができる。そしてイスラム過激派が勢いづく。これはどうしても避けなければならない最悪のシナリオだ。

 

3つめは、希望的な観測。第三の道を模索すること。各国の統治体制を改革していくことだ。シリアだけでなく、比較的安定とされてきたサウジアラビアなどでも国民の不満は溜まっている。内戦を伴う民主化運動が起こる前に、これまでの強権的な政治体制を少しずつ変えていく必要がある。

 

 

中東を反面教師とするならば、2つの教訓が得られそうだ。1つは、富める時こそ戦略を新たに、挑戦を続けること。2つめは、急激な政治的変化は混乱しかもたらさないこと。

 

中東の近代化が遅れたのは、オイルマネーに頼り切って別産業へのシフトを怠ったことだ。日本でも製造業が好調の時に、先を見越して別の産業の育成や労働市場の流動化を行わなかった。結果として、他国の安い製品との競争に破れ苦しんだあげく、ぼろぼろになっても、「ものづくり」しかないと、製造業にしがみつくしかなくなってしまう。勝って兜の緒を締めよ。上手くいっている時にこそ、次の手を考えるべきだ。

 

2つめに関してだが、急激な政治変化は良い結果を生まない。フランス革命のような急激な変化は、歴史・文化・慣習の断絶をもたらす。エドマンド・バークの指摘するように、民主化には秩序ある漸進的改革が必要である。現行の制度、慣習を十分に理解して、少しずつ改革するのがよい。「上手くいかないから変えましょう」は誰でもできる。しかし、「なぜそれが機能してきたのか、そしてなぜ機能しなくなったのか」の議論なしに切り捨てるのはよくない。

 

 

feuillant.hatenablog.com

 

 

中東はもはや他人事ではない。友達はそう言いたかったのだろうか。中東でのテロ・内戦は地域を越えて輸出されているのだ。中東情勢は世界経済にも大きな影響を与える。テレビを見て「中東は危ないから行かないでおこう」と考えている私は、想像力が乏しく、恐ろしいほど考えが浅い。

 

Google先生とのつきあい方『誰が「知」を独占するのか』を読む。

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電動歯ブラシに専門の歯磨き粉があることがわかった。奥さんに「ちょっと調べてよ」と言われて、例のごとくGoogle先生を使って検索した。何も考えず、上位3つの記事を読んで歯磨き粉を選んで奥さんに報告した。「研磨剤が入ってなくて、ジェルタイプがよさそうだ。」「なるほどね。さすが先生」と、奥さんも手放しで先生を賞賛している。ものの5分足らずで必要な情報を手に入れ意思決定までできてしまう。一体、先生がいなかった時代、人々はどうやって調べていたのだろう。

 

WELQとかいうキュレーションサイトが、医学的知見を有した専門家の監修なしで医療に関わる情報を提供していたとして、掲載記事の見直しと非公開になったそうだ。どっかで聞いた名前だなと思い出してみれば、私が調べた歯磨き粉の記事ではないか。

 

歯磨き粉だけではない。子どもの夜泣きがひどい時には、「子ども 夜泣き」で情報を得、増えてきた白髪を染めるのにも「白髪 髪に優しい」で検索する。忙しいことを理由に、さくさくと欲しい情報が入れば、その信用性に1 nanoの疑いを持たず自分の意思決定に反映してしまう。我ながら愚かである。まとめ記事は読みやすいし、時には箇条書きで体言止め。大事なところには色がついているし、文字も大きくなっている。リテラシーが低い私にとっては便利なのである。

 

困ったらGoogle先生に聞く。この発想はいつから定着したのだろうか。社会人になって以降ずっと先生に頼りっぱなしだ。それに反比例するかのように、図書館に行く回数や新聞を読む頻度が減ってしまった。先生と上手につきあうにはどうしたら良いのだろうか。本書はデジタル時代の情報のあり方と、先生とは別の知識体系への取り組を示している。

 

ノート1:情報化時代の新しい「国家」

我々の情報は世界企業のプラットフォームに独占されている。そして彼らの敷くルールの上で情報が提供されている。毎日のように世界の人々がGoogleという「公共」サービスを利用している。まさに新しい国家といえる。そんなGoogleは、全世界の書籍データをスキャンしてデジタル化する野望を打ち出している。少しずつ著作権などの問題をクリアして前進しているようだ。

 

それに対して、特にヨーロッパでは反Googleの動きが加速している。理由は、一民間企業が公共の文化資産を独占することへの恐怖だ。企業のルールでアクセスが無料から有料になる可能性、企業が事業撤退した時の所有権の問題などが懸念されている。そして、その情報の信頼性が不明確であり、誤った情報を人々に植え付ける可能性がある。最も恐れているのは文化の均質化だ。

 

Googleの検索順位は独自のアルゴリズムで決まる。人々は上位検索しかアクセスしない。つまりGoogleが提供する情報を決めている。下位の情報が切り捨てられ、全員が上位の情報で知識を得ていくとしたら、知性は多様化どころか均質化する。特に、英語のような国際語以外の言語は情報が少ないため、文化の喪失にもつながりかねない。

 

ノート2:ヨーロッパのアーカイブ戦争

こうしたGoogleをはじめとするデジタルプラットフォーム企業に対抗して、EU(ヨーロッパ連合)はユーロピアーナという巨大電子図書館の運営を開始した。目的は「文化の維持」と言えるだろう。EU全域にまたがる文化資料を集めて公開している。公的機関の情報や、20世紀以前の古文書なども公開の対象になっている。専門家による知の編纂を通じて、市民に信頼できる情報を提供している。著作権問題やそれに伴うコスト問題もまだまだ課題が多い中、法整備を行い、孤児作品(権利者が不明の作品)などの公開にも踏み切った。

 

デジタルアーカイブを整理し誰もが有益な情報にアクセスできる取り組みは、大陸ヨーロッパからイギリスや北欧にも広がっている。ついには、グローバル企業のお膝元、アメリカでも公的図書館やNPOアーカイブのデジタル化の動きが活発化している。

 

ノート3:日本のケース

デジタルアーカイブ化が各国で進む中、日本ではあまり熱心に行われていない。第一に、国家予算が低く文部科学省予算の2%程度しかデジタル化に充てられていない。そして第二に人員も少ない。アメリカの公文書図書館での人員が2500名に対し、日本の国立公文書館には50名しか働いていない。第三に、それゆえ年金記録など公文書の管理がずさんで、古い資料の欠品や紛失が多い。公的文書は官僚が使う秘密主義的ものとの認識も強い。

 

また著作権・肖像権についても法整備が不十分である。もちろんすべての資料をデジタル化するのは著作権の問題が大きく困難を伴う。それゆえ、著作権がすでに切れている資料を収集するのが必須である。また孤児作品もデジタルアーカイブとしては重要な意味をもつ。しかし日本では孤児作品を公開する場合に権利者を探すコスト、公開をお願いするコストなどが高くつき厳しい。ヨーロッパでは、孤児作品著作権団体に一任し、著書を名乗る人が出てくるまで、公開するオプトアウトをとっているが、日本ではそれができない。それゆえ、なかなかにデジタル化すべき資料が増えていかない。

 

日本でも、ヒト、カネ、著作権の課題を克服してデジタルアーカイブを作っていかなければならない。そしてユーロピアーナをはじめとする世界各国の相互利用ができる世界を目指すべきである。

 

 

世界のすべての情報がデジタル化されれば、どこにいても文化資料・公文書にアクセスできる。デジタルアーカイブという言葉は魅力的に聞こえるのだが、我々がいつも求めている情報とはそんな崇高なものではない気がする。

 

だいたいが私のように「ちょっと知りたい」程度なのではないか。もちろん嘘の情報は困るが、「真実は何か」みたいなものだけが情報ではない。検索すると上位に来る「まとめ記事」は又聞きをまとめただけだろう。論文でもニュースでもない。伝言ゲームみたいだ。どっかの記事をまとめて、それを読んでまたまとめて、まとめのまとめを続けたら答えがちょっとずつズレてくる。そんな感じだ。

 

私はGoogle先生が大好きだし、今後もお世話になるつもりだ。信頼性が低いサイトが検索上位に来る場合もあるだろう。でも、それを信じてしまうのは怪しむ力がない私のせいだ。マーケットだからこそ悪い記事は読まれず、良い記事だけが残る気もする。そして、操作される可能性があるとはいえ、ユーザーが求めるものが生き残るのだろう。生き残ったものが「まとめ記事」ばかりだったら、それはユーザーの能力の低さが問題だ。

 

情報に対する感度、検索の仕方がユーザーに求められているのだろう。世の中私のような阿呆ばかりではないはずだ。自分にとって大事な意思決定を行うときにはもっと慎重にあらゆる手段を使って正確な情報を得るはずだ。巨大な知能Googleと上手におつきあいするには、検索者である私の知的レベルを上げていかなければならないのだろう。

 

それにしても、確かに英語ができるだけで情報量は莫大に増える。やっぱり勉強しておいたほうが得だな。